When You Don’t Know What to Say…

M.D.アンダーソン・キャンサー・センター(米国)作成 小冊子 日本語訳

がんについて 子どもにどう話せばよいかわからない親のために

この冊子は、がんと診断された親が、自分のがんについて子どもと話しあうために、そして、子どものがんへの恐怖心を和らげるために、作成されたものです。

“子どもにだって、がんのように家族に影響を与えることについては、「知る権利」があります。何も知らせないことは、子どもに対する約束違反なのです。子どもは、普段とは“何かが違う”と気づいています。親は何も知らせないことで、子どもを守ろうと思うかも知れません。しかし、そのことが、子どもに必要以上の恐怖心を抱かせてしまうかも知れないのです。”~全米がん協会(American Cancer Society)~

がんについて子どもに話すということ

今の時代、家族にはさまざまなカタチがあるでしょう。しかし、すべての家族は愛という絆で結ばれています。互いに支えあう、人生に起こるさまざまな出来事を分かち合う、それが家族です。そんな家族の誰かが、がんと診断されたら、家族の誰もがショックを受けるでしょう。

この冊子では、がんになった親を持つ子どもに起こりうる問題や、子どもの恐怖心に焦点をあてています。

あなたの病状に対する、子どもの疑問や心配に正直に答えること、それがどんな時でも最善の策です。でももし、病気についてあなた自身の口から子どもに話せない時は、信頼できる他の家族や友人、または、主治医や看護師などの医療従事者に助けを求めてもよいでしょう。また、子どもへの伝え方には直接話すこと以外にも、子どものために手紙を書く、日記をつける、子どもと一緒に聴いたり観たりするテープやビデオを用意する-そのような伝え方もあります。

がんについて子どもにどう話すか

子どもにがんについて話すのは大変なことですが、落ち着いて、思いやりぶかく話すことも不可能ではないのです。まずは、あなたの病気について子どもに話すために望ましいタイミングと静かな場所を選びましょう。次に、あなたが病気であること、どんな種類のがんなのか、そして、この先に起こりうること、それらを正直に、何でも話しましょう。治療や副作用について話し合うことで、これからあなたに起こることを子どもは理解できるでしょう。子どもが質問しそうなことについては、事前に答えを準備しておきましょう。

あなたの病状について子どもと話す機会を持ち続けること、あなたの治療中にどういうことが起こりそうか、子どもに繰り返し教えてやること、それらはとても大切なことです。また、あなたが子どもに話すことや子どもの質問に答えることは、がんという未知のものへの恐怖心を和らげ、子どものさらなる質問に答える機会をあなたに与えてくれます。

がんについてあなたの子どもにどう話すか

どの子どもにも個性があるように、親の病気について聞かされても、それぞれの子どもなりに異なった受け止め方をするでしょう。あなたの子どものことは、あなたが誰よりも分かっているでしょうし、子どもがどんな受け止め方をするかも、あなたなら分かるでしょう。次の年齢別の一覧は子どもとの話し合いの参考にしてください。あなたが子どもに「愛している」といつも伝えること、それが子どもの一番の支えになります。そして、年齢に関係なく、すべての子どもは親が自分のことを考えてくれているか、親が自分のことを誇りに思ってくれているかを知りたがるものです。

あなたの子どもが2~6歳の場合

幼い子どもは想像力が豊かで、人生に起こる出来事を、“マジカル・シンキング”を使って理解します。“マジカル・シンキング”とは、自分がそう望んじゃったから、自分がお利口さんじゃなかったから、自分が“悪いこと”を考えちゃったから、だから“悪い出来事”が起こってしまったんだと、子どもたちが信じ込むことをいいます。

「君のせいでがんになったんじゃないんだよ」と言って、子どもを安心させてあげましょう。幼い子どもは、親から引き離されることを不安に思います。子どもには、いつも通りの日常がとても大切です。何かしらの日常生活の変化は、さらに子どもを不安にさせてしまいます。

あなたが病気について話すときは、子どもの理解力に配慮しましょう。まだ幼い子どもとあなたの病気について話し合うには、人形を使ったり、本を読んだり、絵を描いたり、創意工夫に富んだ方法を活用しながら、短めの話を何回かに分けて話すとよいでしょう。

あなたの子どもが7~12歳の場合

小学校に通う年頃の子どもたちは、空想しがちな一方で、実際に起こっていることを知りたがります。この年齢の子どもたちは、“マジカル・シンキング”もするし、難しい問題に対する理解力も進んできているし、未知の事柄に対する恐怖心もあるので、盛んに質問をしてくることを覚悟しておきましょう。

がんとは実際にどういうものであるかを子どもに話しましょう。また、あなたの治療中に誰が子どもの面倒をみてくれるかも、きちんと伝えましょう。もしかしたら、ひどい言葉を使ったり、感情を爆発させたりすることで、自分の恐怖心を表わす子どももいるかもしれません。また、行儀悪くふるまったり、一人になりたがったりすること、それらもまた、子どもの恐怖心の表われですので注意しましょう。そして、できるかぎり、普段と変わらない生活を維持するように心がけ、しつけも遠慮してはいけません。

家族の中にいろんな決まりごとがあってもよいでしょう。“家族の決まりごと”を守ることも含め、いつもと変わらないという子どもへのメッセージが、家族みんなにとっても必要であり、ほっとできるいつも通りの日常をもたらしてくれるのです。

あなたの子どもが13~18歳の場合

思春期は10代の子どもが成長し自立を求める時期です。この年頃の子どもたちは、誰かに助けを求めることをためらいがちで、親の病気に対しても、自分の感情をぶつける、うろたえて自分の殻に閉じこもる、異常なほど怒る、いつになく納得する、など、さまざまな反応を見せます。家族の経済状況のような大人たちの現実的な心配事には、10代の子どもはあまり関心を持たないようですが、彼らのするであろうたくさんの質問に備えておき、正直に答えるようにしましょう。

子どもの友人関係を尊重しましょう。また、家族以外の人々、学校の先生や教会の牧師(訳注:日本ではあまり当てはまらないかも知れません)、あなたをサポートしてくれるグループのメンバーなどとも、話す機会を設けましょう。

あなたが10代の子どもの感情を理解するために、信頼する家族や友人たちを頼りにしてもよいでしょう。思春期という自我の成長の過程で、“私のことはどうなの?”と、子どもが自分自身のことを考えてしまうことに、罪悪感を持つ必要はないことを伝えてあげましょう。そして、子どもが自分の心配事について、親に質問したり、隠しだてせずに話したりするように導いてあげましょう。

あなたの子どもが19歳以上の場合

子どもが成人しても、あなたの病気について話す必要があります。成人した子どもは、あなたの病状を尋ねる必要性を感じるのと同時に、治療中のあなたの助けになる必要性を感じるかもしれません。大人になった子どもにも、いつもあなたの病状について話しましょう。話すことで、子どもがあなたの治療の手助けをすることができるようになります。子どもが大きくなり、精神的に成長していても、子どもが持つさまざまな感情については、あなたと話しあう必要があります。子どもとあなたが、互いの感情を自由に分かち合える場を設けましょう。

子どもの難しい質問に答えること

子どもにあなたのがんについて話す際に、どんな恐ろしい質問でも、飛ばさずに、きちんと答えることが大切です。親が死んでしまうかもしれないという子どもの不安にも正直に答えましょう。もし、あなた自身の口から、子どもに話せない時は、信頼できる他の家族や友人、または、主治医や看護師などの医療従事者に助けを求めてもよいでしょう。子どもによって、死ぬということへの理解はそれぞれ異なります。まだ幼い子どもに話す場合は、“眠りにつく”、“遠く(あの世・お空)にいく”など、子どもが混乱するような表現を使うことは避けましょう。これらの表現は、幼い子どもを混乱させ、子どもが眠りにつくことを怖がらせてしまうかもしれません。子どもが成長するにつれ、死というものの永遠性について、大人に近い解釈ができるようになるでしょう。しかし、愛する者を失うこと、それが受け入れがたいことに変わりはありません。もし可能であれば、子どもとあなたが、互いのありのままの気持ちを話し合う、どんな質問にも答える、そんな、隠しごとのない、正直な話し合いの場を持つことが理想です。あなたの主治医や看護師などの医療チームが、このような難しい問題の解決策を教えてくれるでしょう。

翻訳:YUKARI


おことわり
言葉や意味を正確に翻訳することを心がけましたが、内容については保証するものではありません。米国と日本では医療体制も社会的環境も異なりますので、あくまでも参考資料としてお読みください。

冊子の発行元(M.D.アンダーソン・キャンサー・センター)には、日本語への翻訳に関して了解を得ていますが、発行元が日本語に翻訳された情報の保証をするものではありません。

HP管理者、翻訳者、監修者はこの翻訳内容と、それによって引き起こされたことに対して、いかなる責任も負いません。

Japanese translation of the booklet “When You Don’t Know What to Say…” with permission from The University of Texas M. D. Anderson Cancer Center. © 2005 The University of Texas M. D. Anderson Cancer Center,revised 05/13/15,Patient Education Office.

翻訳監修:神田善伸先生(自治医科大学附属さいたま医療センター)
翻訳:YUKARI(Patient Advocate Liaison)
企画:Patient Advocate Liaison 代表 古賀真美